Lifestyle を見つめて

これからの高知の林業を考える(農業問題研究会)

2015年12月5日、高知市内で開かれた農業問題研究会に出席。この研究会は、わたしが高知に赴任した1980年代には高知の農業に関心のある農家の人から、国や自治体職員、組合、歴代の学長を含む大学教員まで幅広い分野の人びとからなっていて、高知の農業を深く理解するには欠かせないものだった。その後、永らく休眠していたが、昨年ひょっこり再開の提案があって小規模ながら2ヶ月に1回程度開催されてきている。
今回の報告者は、中村市森林組合組合長の宮本昌博さん。テーマは『文化としての林業へ』。20151205s
高知の林業の第一線から得られる現実感覚は総じて新鮮で刺激的だったが、ここではわたしたちの身近な生活と係わる論点を一部紹介したい。
結論部の「林業立て直しの方向」のところを端的に言うと、今一度地域に目を向けて良質のヒノキの生産技術と消費者の評価能力を蓄積すること、それを地域内での連携や共同をつくり強めていくことが重要、とのこと。
言いかえると、住宅の場合、地域の木材や職人・技術者を顧みないプレカット住宅ではなく、土佐の歴史・風土のなかで作られてきた地元の材を使った住宅、それを技術的に支えてきた左官職人や大工を大切にしながら地域の建築文化を継承発展させていくことこそが、地域の産業(林業)や生活文化の向上につながる、と考える。
そして、構造材に本物の地元ヒノキを使って作った久礼中学校を例に挙げつつ、そのためには、行政には「原材料は役場が出す」と言って地元のものを使うというような対応が、そして消費者にはその建物のすばらしさを評価できる評価能力を涵養することが必要で、そうしたことが地元の林業とその文化の発展を支える、と主張する。
仕事が少なくなり左官職人や大工がいなくなってしまうということは、かれらの生活の糧がなくなることだけでなく地域の建築物を支えてきた伝統的技術が途絶えることでもある。そうしたことを避けるのが行政の役割であることに気がつく必要がある。そして、地元の四万十ヒノキの生産から消費まで、全プロセスに携わる地元の人が協力・連携して建築文化を育てていくことが、林業の再生につながる、と指摘する。
わたしたちが人生で一度は直面する住宅に関していうならば、氏の報告は、消費者が「安価な住宅」を求めて孤立的に考えるのではなく、地域の歴史文化を大切に地域全体で協力して質の高い住宅を実現していく方向性を示したものとも言えよう。(2015年12月7日-MI)

2015-12-07 | Posted in Lifestyle を見つめてNo Comments » 
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