2016-03

手づくり紙芝居、カワウソ健太くん、ほぼ完成

 手づくり紙芝居作家、松井豊美さんの新作がほぼ完成。高知市内のとある喫茶店で試写会ならぬ試演をしていただいた。実は、これは私がニホンカワウソの標本調査で心に残った記憶をもとに絵本或いは紙芝居用にと原案を創ってお渡ししていたものだったので、松井さんが見事に紙芝居用の新作として鋳直して創られたこの作品は特に感慨深く見させていただいた。
20160319 松井さんは創作作業をはじめるにあたって主人公、健太君(二ホンカワウソの名前)の剥製のある大月町役場を訪れただけでなく、健太君が亡くなった場所である白浜海岸まで行って構想を練ったとのこと。近年絶滅したニホンカワウソをモチーフに、人間と動物の関係のあり方を松井さんなりに考え、それを紙芝居を見る人に共感と感動を伴って伝えることができるよう工夫されていた。
 これまで作品を見させていただいてきているが、一作ごと試行錯誤と努力の跡が感じられる。個人的には、刺激・インパクトの強い絵に依拠してメッセージを伝えるのではなく、やはり作者の人格が映しだされるような、絵とストーリーが調和し、心の奥底に心地よく記憶として残るこれまでの作品づくりの基調は今後も続けて欲しいと思う。
  当日は、四万十町在住の松井さんがわざわざ高知市まで来られたことでもあり、天気も回復してきたので紙芝居でも取り上げている野市動物園まで参加者みんなで行ってみようという事になった。が、あいにく園長さんは休みを取られていたので、園長さんにご挨拶するのも動物園で飼われているユーラシアカワウソを見るのも次回ということになる。(2016年3月19日-MI

2016-03-19 | Posted in Lifestyle を見つめてNo Comments » 

 

高知県立埋蔵文化財センター 訪問

 3月16日、南国市にある県埋蔵文化財センターを訪れる。これまで展示品を見に行ったこともある施設だが、今回の目的はリアル高知に掲載予定の記事に関する打ち合わせである。
 雑談を交えた話の中で、センターの調査活動が旧石器時代からまだその時代を記憶する生存者のいる第2次大戦期まで拡げられてきていることを聞かされる。
 古代(奈良・平安時代を指す。大和朝廷時代も含める?)からさらに歴史をさかのぼった文字のない時代、いわゆる旧石器時代や縄文・弥生時代の生活はというと主に発掘を通じて明らかにしていくほかないが、高知におけるその作業を一手に引きうけているのがこのセンターであり、有史以前の地域の歴史を解明していくこの施設の役割には極めて重いものがある。しかしながら、発掘調査はそれ以降の時代についても歴史を明らかにしていく手段として欠かせない。センターはそれについても取り組んできているとのことである。
 現代は、機械で容易に土地を掘り起こすことができる時代である。土地開発が進み、地表や地下に眠る地域の生活史が永久に消えてしまう状況も進展している。センターは発掘によって歴史を記録・保存し、重要な遺跡を保存整備することによって、開発で消失しつつある埋もれた歴史を白日のもとに蘇らせているかにみえる。
  ところで、各地でなされているこうした発掘調査をつうじて私たちのルーツである過去がつぎつぎと明らかとなっている。その結果、センターの資料でも紹介されているように時代区分さえも変わってきている。たとえば、従来の教科書では弥生時代の始まりは紀元前3世紀となっていたが、現在では紀元前10世紀までさかのぼっている。藤尾慎一郎『弥生時代の歴史』(講談社、2015年)によれば、弥生時代の指標となる水田耕作は紀元前10世紀の九州北部で始まり、弥生文化が展開されたのは本州・四国・九州とある。センターの調査研究を通じて四国高知の弥生文化が生き生きとしたものとして明らかになっていくことを期待したい。

 打ち合わせが済んでから施設を案内していただく。私たちからいうと展示室のバックヤードともいえる館内の作業室等ではかなり数の職員が黙々と作業をしていた。あとで年報(2013年度)を見てわかったことだが、調査課の人数は契約職員も含め総勢19名の体制となっていた。
20160316-1 そこでは、遺跡で見つかった出土品に遺跡名や地点等を記号で記入していく作業から、牧野富太郎のあの芸術的ともいえるような植物スケッチを想起させる正確に測定されたスケッチ、ピースの欠けたパズルを組み立てるような接合作業等までを見させていただいたが、こうした手間暇のかかる地道な作業現場こそが、高知の生活史をいにしえの祖先から明らかにしていく最前線といえるのではないか。(2016年3月18日-MI

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