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enjoy outdoorlifeRegional public transport (1)

これからの地域公共交通(路面電車・鉄道)−高知−

   地域における企画力はその地域の発展を左右し、その低下は地域の発展を困難なものにする。
高速交通ネットワークとしての高速鉄道について、新幹線の四国への導入の検討が最近になって再開されているので、少し触れておきたい。
 ずいぶん過去のことになるが、高知への新幹線整備計画については「全国新幹線鉄道整備法(1970年)」にもとづく「全国新幹線鉄道の基本計画」で建設を開始すべき路線(「四国横断新幹線」1973年)として決められている。 そのこともあって1988年に四国と本州を繋げた瀬戸大橋は新幹線規格で作られている。
 一方、その前年(1987年)に策定された4全総(第4次全国総合開発計画)は整備目標として「全国一日交通圏」の構築を掲げた。この全国一日交通圏は、全国の主要都市間をおおむね3時間以内に移動することが可能であり、 地方都市から複数の高速交通機関へおおむね1時間以内でアクセスできるような高速交通ネットワークが整備された姿である。この高速交通ネットワークというのは、高規格幹線道路、新幹線、空港のことを指す。
 当時、高知市が「1時間以内でアクセス」できるのは空港のみで一日交通圏エリアからは外れていた。現在では「高速道路」もでき「複数」にはなっている。しかし、だれもが安心して、短時間で目的地にアクセスでき、しかも大量の移動を通じて各地を結びつける新幹線はない。高知への新幹線整備の今後の見通しについては、 すでに蓄積されてきている極端な国家債務残高や地元での人口減(高知では30年間で3割の減少)の推計が、その計画の凍結解除の前に立ちはだかってきている。
   しかしながら、地方都市としての高知市が我が国の高速交通ネットワークの一環を形成し発展していくことは、ひとり高知のみならず我が国の均衡ある発展にとっても不可欠の要素と考えられる。

《地域公共交通:LRT(次世代型路面電車システム)の導入について》
   高知では都市部でも30年間に2割以上の人口減が予測されている。人口減、高齢化の進行下での公共交通のあり方として「現状の継続的視点」、弥縫策では展望は見えてこない。 公共交通重視の地域社会を展望するにあたっては公共交通の運行を困難なものにしてきた構造的・歴史的要因を明らかにする作業が必要となる。
 また、今後の地域づくりの核となる概念としてコンパクトシティの考えが定着してきているが、この考えは空間的には市内を中心に考える傾向にある。都市のスプロール化が進んだ現在、コンパクトシティで重視される公共交通もまたより広い生活圏を視野に入れる必要がある。
 都市のスプロール化といわれるこれまでの無政府的な人口配置は自家用車による移動を前提にしたもので、一見、安価な住宅や自由な生活を実現してきたかにみえる。 しかし、この無政府的に広がった人口配置とそれに続く後追い的な社会資本整備(道路・学校など)や利便施設の展開は、資源・エネルギーの浪費、社会的非効率を招くことになった。
   公共交通の利用者減もその一つである。地方における公共交通の経営難は、自家用車の利便性もその要因ではあるが、むしろこうした地域における計画性のなさがトリップエンド(出発地・到着地)をばらばらなものにし、 公共交通を利用しにくいものにしたこと、そしてその結果、利用者減に直面した交通事業者が便数を減らしたり運賃を上げ、利用者減に拍車をかける対応を行ってきたことが大きな原因といえる。
深刻化する公共交通の経営難は、高齢化、人口減を前にこうした構造的な原因への対応、しっかりとした都市計画の必要性を示している。
 通常、私たちが住む住宅については、空間的・時間的に合理的な移動(動線)を考え、設備・備品を計画的に配置する。それが、便利で快適な家庭生活には欠かせないと考える。 そうした考えを日常生活空間としての地域的な広がりの中にも求め、合理的な移動の柱に公共交通を据え便利で快適な生活を計画していくとすれば、高知の都市部ではその第一歩はどのように考えられるであろうか。
   ここでは、LRTの日本への導入の可能性が議論された時期、高知への導入の可能性を検討した論文(注)を手がかりに現在から振り返りながら概観してみよう。
 まず、高知の路面電車の現状から考えられるのがとさでん(電車)を高知駅からイオンモールへと延伸する計画。これはイオンモールに限らず将来にわたり多くの人びとが利用する施設がそこに配置され、 将来にわたって移動需要があるとの見通しのもとでの整備計画である。また、すでに多くの住民が住んでいる瀬戸方面には桟橋からの延伸も考えられる。さらに鉄道を含む広域にわたる路線整備の可能性を図に示すとつぎのようになる。

route-A,B

   ここでは空港への接続も考えられるが、路面電車(現在のとさでん)と鉄道(ごめんなはり線)との接続によるLRT運行の可能性という2002年時点での検討を一部紹介する。
 そこでは、2002年に「高知市へのアクセス調査」を安芸市で実施し、意向調査も行っている。その意向調査では、図にもあるルートA、ルートBについて、「2つの路線が出来たとすれば、どちらの路線をより多く利用したいか」との質問に 「ルートA」が19%であったのに対し「ルートB」は46%となっていて、「ルートB」へのより強いニーズが示されている。

ルートA(既存)
(奈半利駅)…ごめん・なはり線…(後免駅)…JR土讃本線…(高知駅)
ルートB
(奈半利駅)…ごめん・なはり線…(後免町駅)…土電…(はりまや橋)…(鏡川橋)

   また、ルートBのコスト・技術的な問題に関しては、路面電車と鉄道という相違はあるがすでに路線は存在し、両路線の接続点(後免町駅)は隣接していて、ともに狭軌である。
   他方、軌道の補強や電化の問題、路面電車の郊外の専用軌道を高速運行するにあたっての踏切への対応等、課題も多い。とはいえ、ここで取り上げた路線については、人口の計画的な移動・配置を含む都市計画と連携した交通ネットワークの再構築を計る際には検討すべきテーマと考えられる。(2015年12月1日−MI

(注)井本正人「第2章 地方におけるLRT導入の可能性 −高知−」(井本正人編著『公共交通とまちづくり』高知女子大学生活科学部、2002年3月)参照。


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